峯岸先生クリニックコースの課題曲が決定しました!
①Jorja Smith / Little Things
配信リンク: Qobuz – Little Things
楽曲解説:「Little Things」は、UKソウル・R&Bシーンを代表するアーティスト、ジョルジャ・スミスによるミッドテンポのナンバー。ジャジーで柔らかいコード感をベースに、ダンサブルでリズミカルなビートが重なり、都会的で洗練された空気感を生み出している。彼女特有のややハスキーでしなやかなヴォーカルは、軽やかなグルーヴの中でも存在感を放ち、曲名のとおり「ささやかな瞬間」の魅力を繊細に描き出す。
音数は決して多くないものの、ベースラインのうねりと細かく配置された打ち込みのビートが絡み合い、絶妙な浮遊感と抜けの良さを実現している。全体的に空間的な広がりを意識したミックスが施されており、ヴォーカルと各楽器の定位が立体的に感じられるのも特徴だ。
再生時のポイント:リズムとヴォーカルのバランスを丁寧に再現することで、楽曲が持つ繊細なムードを活かすことができる。特に低音域のベースの動きやキックの粒立ちを崩さず、ジョルジャの柔らかくも芯のある声が埋もれないように、中域の抜けや声の質感表現に配慮したい。全体としては、過度な強調を避けつつ、透明感のある再生が望ましい。
この楽曲は、派手さよりも質感と空気感で魅せる一曲。音のディテールをじっくり楽しめるリスニング環境で、その真価を発揮する。
②Niccolò Paganini / 24のカプリース 作品1:第1番 ホ短調 Andante
演奏: María Dueñas(ヴァイオリン)
配信リンク: Qobuz – Track 1
レーベル: Deutsche Grammophon (℗ 2025)
楽曲解説:ニコロ・パガニーニの《24のカプリース》作品1は、ヴァイオリン独奏曲の金字塔とも言える作品群で、超絶技巧と詩的な表現力の両面を兼ね備えています。その第1番 ホ短調「Andante」は、技巧的な要素よりもむしろ、語るような旋律と内面的な表情が重視される作品です。単にゆったりとしたテンポではなく、緊張感を保ちながら進む音楽には、陰影や間の美しさが宿っています。
今回の録音では、マリア・ドゥエニャスの演奏がその本質を鋭く捉えており、技巧に走らず、旋律の抑揚や音のニュアンスに深い感受性を注ぎ込んでいます。彼女の音は繊細で透明感がありつつも芯があり、パガニーニが楽譜に込めた「語り」の要素を丁寧に引き出しています。
再生時のポイント:本楽曲では、ヴァイオリン独奏というシンプルな編成ながらも、演奏者の身体的なニュアンスやホールの響きが非常に重要です。音の立ち上がり、弓の返し、微細なビブラートといった要素を自然なかたちで再生できる環境が求められます。
とくに注意したいのは、倍音成分と空間の再現性。マリア・ドゥエニャスのヴァイオリンが持つ柔らかく丸みのある音色が、鋭すぎず、かつぼやけないように再生されることが理想です。録音はDeutsche Grammophonらしいナチュラルな空気感があり、音像が過度に前に出すぎず、奥行きを持って定位することで、作品の持つ静かな緊張感を損なわずに楽しめます。