クリニック土方氏コース聞きどころです。
①ボーカル
サマラ・ジョイ 『Tight』
サマラ・ジョイはアメリカのジャズ歌手です。彼女は2021年にセルフタイトルのデビューアルバムをリリースし、その後、JazzTimesによって最優秀新人アーティストに選ばれ一気にスターダムに上がりました。ボーカル楽曲ということで、音像定位は最初の聞きどころです。コンソール中央付近に可能であれば口元の動きが見えるようにリアルに定位させてください。上級者はバックミュージックに対する前後の飛び出し方(いわゆる前後の定位感)も意識してほしいです。サマラ・ジョイはデビュー当時往年の名歌手サラ・ヴォーンの再来と言われていましたので、独特な声質に不自然さがないように。音楽的な解釈としては、アップテンポな音楽性とジャズらしいグルーブ感を表現してほしいです。
②クラシック
『トーマス・アデス: バレエ音楽「ダンテ」
Pt. I “Inferno”: XII. The Thieves—devoured by reptiles』
グスターボ・ドゥダメル 、 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
今年のグラミー賞でクラシック部門の最上位「オーケストラ演奏賞」に輝いた楽曲です。バレエ音楽でダンテの死後の世界をめぐる、壮大な叙事詩『神曲』をテーマに現代の名指揮者グスターボ・ドゥダメルがロサンゼルス・フィルを率いて演奏されています。個人的な印象ですが、現在のグラミー賞は音楽性とともに音質が優れていないと受賞できません。意識してほしいことは大きく3点あります。1点目は都度お話ししている通り、ソースに忠実な帯域バランスです。2点目は歪みのないサウンドステージ、最低でも聴感上、左右の音圧バランスは合わせてほしいです。3点目は抑揚表現で、ダイナミックな演奏をするのでその追従力が求められます。